痛みの評価法
山田 恵子/順天堂大学大学院医学研究科疼痛制御学
慢性疼痛は身体だけでなく、心理・社会的要因が関与する複雑な症状です。本講義では、心理専門職が慢性疼痛患者を適切に評価し、医療職と協働するための実践的な知識を学びます。
痛みの生物心理社会モデル(BPSモデル)に基づき、患者の痛みの強さ・性質だけでなく、心理的・社会的背景を含めた多面的な評価の重要性を解説。標準的な評価ツール(NRS、McGill痛み質問表、PDASなど)の活用法も学びます。
また、患者とのコミュニケーションスキルや「治療関係の構築」のポイントを具体例を交えて説明。患者の心理的負担を軽減し、より良い治療に繋げるための実践的アプローチを紹介します。
慢性疼痛患者に対する初診時の評価
柴田 政彦/奈良学園大学保健医療学部
この講義では、慢性疼痛患者に対する初診時の評価について解説します。慢性疼痛の診療では、病歴の聴取、身体所見の評価、精神科疾患の有無、生活状況や環境の把握が重要です。本資料では、痛みの発生要因や併存疾患の確認、睡眠評価、服薬状況の把握など、初診時に必要な評価項目を具体的に紹介し、患者の症状を包括的に理解するためのポイントを示します。また、心理社会的因子の影響を考慮した診療の進め方や、患者との信頼関係を構築するための注意点についても解説。慢性疼痛患者に適切なケアを提供するための実践的な評価手法を学ぶことができる内容です。
慢性疼痛患者との対応スキル(心理職編)
岩佐 和典/大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
この講義では、慢性疼痛患者との対応スキルについて解説します。慢性疼痛の治療では、医療者と患者の「良い関係(ラポート)」が不可欠であり、適切なコミュニケーションが治療効果に大きく影響します。本資料では、共感的対応、質問、言い換え、要約、フィードバックといった基本的な傾聴スキルを活用し、患者の思考を痛み中心から生活支障や感情的問題に向ける方法を説明します。さらに、痛みに関する話題の揺り戻しにどう対応するか、患者の動機を引き出しながら必要なケアにつなげる技術についても具体例を交えながら解説。慢性疼痛患者との信頼関係を築き、治療をより効果的にするための実践的な内容となっています。
慢性疼痛患者との対応スキル(医療者編)
水野 泰行/関西医科大学心療内科学講座
慢性疼痛患者は、検査で異常が見つからないことに不安を抱き、「気持ちの問題」と言われ続けることで、自責感や不信感を持ちやすくなります。本講義では、心理専門職が患者の心理状態を理解し、適切に対応する方法を学びます。
重要なポイントは、患者の痛みを否定せず、「あなたの責任ではない」「よく努力してきた」と伝えること。傾聴を通じて、患者の話の中から重要な部分に焦点を当て、共感の言葉をかけることが信頼関係の構築につながります。また、治療者自身も価値観の押し付けや過信を避け、自己分析を行うことが求められます。
本講義を通じて、慢性疼痛患者とのより良い関わり方を学び、実践に活かしましょう。
痛みの慢性化要因
柴田 政彦/奈良学園大学保健医療学部
この講義では、痛みの慢性化要因について解説します。慢性疼痛は、単なる身体的な問題ではなく、侵害受容性・神経障害性・心理社会的要因が複雑に絡み合った現象として捉えられます。本資料では、慢性化を引き起こす主な要因として、持続する侵害受容、神経障害性疼痛、うつ病・不安障害、発達障害の傾向、認知障害、日常生活への不満、医療への過剰な期待、利得、身体化傾向、防衛機制などを取り上げ、それぞれの特徴と対応策を詳しく説明します。特に、心理社会的要因がどのように痛みの認識や行動に影響を及ぼすのかを考察し、慢性疼痛治療における包括的なアプローチの重要性を示します。
痛みの慢性化要因(養育体験を中心に)
細井 昌子/九州大学病院心療内科・集学的痛みセンター
coming soon
痛みの基礎医学
仙波 恵美子/和歌山県立医科大学、大阪行岡医療大学
柴田政彦/
奈良学園大学保健医療学部
痛みは単なる感覚ではなく、生物学的・心理学的・社会的要因が複雑に関与する現象です。本講義では、痛みの生理的メカニズム、慢性痛の病態、中枢神経系の役割について学びます。
痛みの分類(生理的・病的)、痛覚伝達の仕組み、脳の報酬系や情動の関与、慢性痛における「恐怖ー回避モデル」、痛み・ストレス・うつの関連性などを解説。最新の脳科学的知見を踏まえ、慢性痛患者の行動や心理に影響を与える要因を理解します。
認知行動療法の基礎
細越 寛樹/関西大学社会学部社会学科
この講義では、慢性疼痛に対する認知行動療法(CBT)の基礎と実践的なアプローチについて解説します。CBTは、慢性疼痛の悪循環(痛み・破局的思考・不安・回避行動など)を断ち切り、患者の生活の質(QoL)を向上させることを目的としています。本資料では、認知行動モデルを用いた痛みの理解、認知の再構成、行動活性化、リラクセーションなど、効果的な治療技法を詳しく紹介します。また、患者との探索的・発見的・協力的な会話の進め方を具体例とともに解説し、患者自身が痛みに対処する主体性を引き出す方法を示します。慢性疼痛治療における心理的アプローチの重要性を学ぶことができる実践的な内容です。
リラクセーション法
福森 崇貴/徳島大学大学院社会産業理工学研究部
この講義では、リラクセーション法とその慢性疼痛への応用について解説します。リラクセーション法には、呼吸法、漸進的筋弛緩法(PMR)、イメージ法などがあり、心身の緊張を和らげ、痛みの自己管理を促します。特に、腹式呼吸の効果や、PMRによる筋肉の意識的な弛緩が、慢性疼痛患者の痛みに対するコントロール感の回復に役立つことが示されています。本資料では、具体的な実践方法に加え、慢性疼痛患者がリラクセーションを実施する際の課題とその対処法についても詳しく説明します。痛みに振り回されず、生活の質を向上させるための実践的アプローチを学ぶことができる内容です。
行動活性化
福森 崇貴/徳島大学大学院社会産業理工学研究部
この講義では、行動活性化(Behavioral Activation:BA)とその慢性疼痛への応用について解説します。行動活性化は、うつ病治療から発展したアプローチであり、日常生活の中で「健康を促進する活動」を増やし、「回避行動」を減らすことを目的としています。本資料では、慢性疼痛の悪循環モデルを示し、行動活性化によって痛みへの意識を減らし、達成感や充実感を得るプロセスを説明します。さらに、活動記録の活用、価値に基づく行動の選択、小さな成功体験の積み重ねといった実践的な方法を詳しく紹介し、患者のモチベーション維持や行動変容の促進方法についても考察します。慢性疼痛患者のQoL向上に向けた、実践的なアプローチを学ぶことができる内容です。
アクティビティ・ペーシング
細越 寛樹/関西大学社会学部社会学科
慢性痛患者は、痛みを無視して頑張りすぎる「過活動型」と、痛みを恐れて休みすぎる「不活動型」に分かれることが多く、どちらも悪循環を生みます。本講義では、痛みに左右されず、自分で活動と休息のバランスをとる「アクティビティ・ペーシング」の実践方法を学びます。
実際の事例をもとに、活動量の測定(ベースライン把握)、段階的な目標設定、行動変容のプロセスを解説。さらに、認知行動療法(CBT)やマインドフルネスを活用し、痛みに適応しながら生活の質(QOL)を向上させる方法を紹介します。
認知再構成
細越 寛樹/関西大学社会学部社会学科
この講義では、慢性疼痛患者に対する認知再構成の基礎と実践的アプローチについて解説します。認知再構成は、痛みの悪循環を断ち切り、適応的な行動を促すための重要な手法であり、特に破局的思考や回避行動の軽減に有効です。本資料では、認知の種類(内容と過程)、認知の気づきと変容の3ステップ、認知を柔軟にするための技法(外在化・親友アドバイス法・根拠法)を紹介し、患者が自身の思考パターンに気づき、より適応的な考え方へと変えていく方法を具体例とともに説明します。慢性疼痛治療における心理的アプローチの一環として、認知行動療法(CBT)の実践的スキルを学ぶことができる内容です。
アサーション
細井 昌子/九州大学病院心療内科・集学的痛みセンター
coming soon
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
酒井 美枝/名古屋市立大学病院いたみセンター
この講義では、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を活用した慢性疼痛治療の実践について解説します。ACTは、痛みを完全に消すことを目標とせず、痛みと共により充実した生活を目指す心理療法であり、認知行動療法(CBT)の発展形として、マインドフルネスや行動変容を重視しています。本資料では、心理的柔軟性の向上を目的としたACTの基本概念やのびやかプログラムの具体的なステップの紹介と、症例の報告を通して、慢性疼痛患者が痛みにとらわれず価値ある行動を増やすための実践的アプローチを詳しく説明します。また、医学モデルとの違いや、患者が陥りやすい「痛みの悪循環」への対応についても考察し、心理的介入の可能性を探る内容となっています。
マインドフルネス
林 紀行/仁泉会病院内科・行岡病院精神科
この講義では、マインドフルネスの概念と医療・臨床への応用について解説します。マインドフルネスは、「今この瞬間に意識を向け、評価せずに観察する」ことを基本とし、慢性疼痛や不安・うつ、PTSDなどの治療に活用されています。本資料では、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)やマインドフルネス認知療法(MBCT)などの実践的アプローチを紹介し、心理療法やリハビリテーションとの関連を探ります。さらに、瞑想の種類(集中瞑想と洞察瞑想)や、日常生活における応用方法を詳しく説明。マインドフルネスをセルフケアや臨床実践に取り入れ、患者の心身の健康を支えるための指針となる内容です。
集学的診療
前田 吉樹/奈良学園大学保健医療学部
この講義では、「集学的診療」による慢性疼痛への治療アプローチを解説します。集学的診療は、医師、看護師、理学療法士、心理職など多職種が連携し、患者の身体的・心理的・社会的側面を統合的に評価・治療する手法です。本資料では、痛みの教育とリハビリテーションの役割、特に認知行動療法を取り入れたアプローチの有効性について説明します。また、篤友会千里山病院での実践例を通じて、問診・診察・心理評価・リハビリテーションを組み合わせた治療プロセスを紹介します。患者が主体的に治療に取り組み、慢性痛を克服するための実践的な知見を提供する内容となっています。
条件付け
前田 吉樹/奈良学園大学保健医療学部
この講義では、「条件付け」と痛みの慢性化に関する学習メカニズムを解説します。まず、恐怖条件付けの概念として、「アルバート坊やの実験」を例に、無条件刺激(US)と条件刺激(CS)による恐怖反応の形成を紹介します。次に、オペラント条件付けを取り上げ、痛み回避行動がどのように形成・維持されるかを説明します。特に、「痛みの恐怖ー回避モデル」に基づき、痛みの予測が運動回避行動を生み、慢性化を引き起こす過程を示します。さらに、恐怖条件付けの消去と段階的暴露療法の実践例を通じて、慢性痛リハビリテーションへの応用を考察します。この講義は、痛みの認知と学習の関係を理解し、適切な介入方法を学ぶための指針となる内容です。
慢性疼痛患者に対する運動療法
下和 弘/神戸学院大学総合リハビリテーション学部
この講義では、慢性疼痛患者に対する運動療法について解説します。運動療法は、慢性疼痛マネジメントの第一選択肢として位置付けられ、痛みの軽減や身体機能の向上、QoLの改善に寄与します。本資料では、有酸素運動や筋力トレーニング、バランス運動などの種類と、それらの効果を紹介するとともに、Fear-Avoidance Model(痛み回避モデル)に基づく運動療法の意義を説明します。さらに、患者の不活動を是正し、行動活性化を促すための目標設定の工夫や、認知行動療法(CBT)の理論を活用した運動療法の継続方法についても詳しく解説。慢性疼痛の治療における運動療法の適応と限界を理解し、実践に活かせる内容となっています。
慢性痛疾患
西江 宏行/川崎医科大学附属病院臨床腫瘍科
この講義では、慢性痛疾患(慢性腰痛、頚腕症候群、線維筋痛症、CRPS)の病態と治療アプローチについて解説します。これらの疾患は、痛みの原因が明確に特定できない場合が多く、身体的要因に加えて心理社会的要因が影響を与えていることが特徴です。本資料では、痛みの分類(侵害受容性・神経障害性・痛覚変調性)、生物心理社会モデルに基づく痛みの理解、各疾患の診断基準と治療法について詳しく説明します。特に、認知行動療法(CBT)や運動療法などの非薬物療法の有用性、多職種連携による集学的診療の重要性を強調し、患者のQoL向上に向けた実践的アプローチを紹介します。
慢性疼痛患者と精神疾患
富永 敏行/京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
この講義では、慢性疼痛と精神疾患の関連性について解説します。慢性疼痛は、うつ病、不安症、統合失調症、認知症、依存症、自閉スペクトラム症などの精神疾患と密接に関係し、患者のQoLを大きく低下させる要因となります。本資料では、各疾患ごとの特徴と慢性疼痛との関わりを詳しく説明し、精神疾患が痛みの感じ方や治療に与える影響について考察します。また、慢性疼痛に対する心理的介入の必要性や、多職種連携による集学的治療の重要性についても触れています。精神科的視点から慢性疼痛を理解し、より適切な治療・支援を提供するための知見を学ぶことができる内容です。
心理職としての慢性疼痛治療への参加経験
平子 雪乃/杏林大学保健学部臨床心理学科
この講義では、心理職による慢性疼痛治療への参入とその役割について解説します。慢性疼痛は生物学的要因だけでなく、心理社会的要因が深く関与しており、集学的治療における心理的介入の重要性が高まっています。本資料では、臨床心理士・公認心理師がペインクリニック外来で果たす役割や、多職種連携による治療の実践例を紹介します。特に、認知行動療法(CBT)を用いた痛みのマネジメント、患者の心理教育、動機づけ支援などの具体的なアプローチを詳しく説明。さらに、心理職の参入形態や、慢性疼痛治療における心理支援の意義、今後の課題についても考察します。心理職の新たな活躍の場として、慢性疼痛治療への貢献を考える内容です。
集学的痛みセンターに所属する心理師の立場から
酒井 美枝/名古屋市立大学病院いたみセンター
この講義では、心理職による慢性疼痛治療への参入とその役割について解説します。慢性疼痛は生物学的要因だけでなく、心理社会的要因が深く関与しており、集学的治療における心理的介入の重要性が高まっています。本資料では、臨床心理士・公認心理師がペインクリニック外来で果たす役割や、多職種連携による治療の実践例を紹介します。特に、認知行動療法(CBT)を用いた痛みのマネジメント、患者の心理教育、動機づけ支援などの具体的なアプローチを詳しく説明。さらに、心理職の参入形態や、慢性疼痛治療における心理支援の意義、今後の課題についても考察します。心理職の新たな活躍の場として、慢性疼痛治療への貢献を考える内容です。
日本の医療制度
三木 健司/大阪行岡医療大学医療学部
この講義では、日本の医療制度と心理職が知っておくべき制度の概要について解説します。日本の医療制度は、国民皆保険制度を基盤とし、健康保険、労災保険、自賠責保険、生活保護における医療扶助など、多岐にわたる保障制度が存在します。本資料では、慢性疼痛や精神疾患の診療報酬、心理支援加算の新設、医療費の自己負担割合、高額療養費制度、自立支援医療制度、傷病手当金の仕組みなどを詳しく説明します。また、社会保障費の推移や、今後の医療制度の課題についても考察し、心理職が患者支援の中で理解しておくべきポイントを整理します。
疼痛に関する薬物治療
三木 健司/大阪行岡医療大学医療学部
この講義では、慢性疼痛に対する薬物治療の基本と心理職が知っておくべき知識について解説します。疼痛治療においては、NSAIDs、アセトアミノフェン、オピオイド、抗うつ薬、抗てんかん薬などが用いられ、それぞれ異なる作用機序と適応を持ちます。本資料では、各薬剤の作用機序、副作用、適応疾患、使用時の注意点を詳しく説明し、慢性疼痛の種類(侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛)に応じた適切な薬物選択について考察します。また、薬物療法と心理療法の併用による治療効果の向上、心理社会的要因が薬物治療の効果に与える影響についても触れ、心理職が臨床で果たす役割について考察します。
慢性痛と就業
北原 照代/滋賀医科大学社会医学講座衛生学部門
この講義では、慢性疼痛と就業の関係、および職場復帰支援の重要性について解説します。腰痛や頸肩腕障害などの作業関連性運動器障害(WMSDs)は、労働者の健康問題として大きな問題となり、特に非災害性の慢性疼痛は労災認定が難しく、適切な治療や支援が遅れがちです。本資料では、慢性疼痛の発生メカニズム、職場環境や作業管理の重要性、産業医や主治医との連携、復職支援プログラムの有用性について詳しく説明します。また、段階的な職場復帰のプロセスや、心理社会的要因が痛みの慢性化に及ぼす影響についても考察し、治療と仕事の両立を支援するための実践的なアプローチを紹介します。
緩和医療における痛み診療 ①
山根 朗/おく内科・在宅クリニック
慢性疼痛や緩和医療の現場では、身体的な痛みだけでなく、心理的・社会的な要因が深く関わります。本講義では、心理専門職が患者の痛みを多角的に評価し、医療職と協働するための実践的なスキルを学びます。
緩和ケアや慢性疼痛診療において、心理職が果たす役割は拡大しており、患者の心理的苦痛への対応や、痛みの生物心理社会モデル(BPSモデル)に基づく評価の重要性が求められています。
講義では、標準的な評価ツールの活用法、患者との効果的なコミュニケーションスキル、緩和医療における医学的知識の必要性について具体例を交えて解説します。
緩和医療における痛み診療 ②
山根 朗/おく内科・在宅クリニック
緩和医療では、身体的な痛みだけでなく、心理的・社会的苦痛への対応が不可欠です。本講義では、公認心理師が緩和ケアチームの一員として果たすべき役割と、実践的な介入方法について学びます。
実際の症例をもとに、がん患者やその家族の心理的課題、再発への恐怖、痛みの管理、ケミカルコーピングの問題などに焦点を当て、心理的支援の具体的なアプローチを解説。医療者との協働の重要性や、患者との効果的なコミュニケーションスキルについても詳しく説明します。